ヘーゲルの『法の哲学』序文の最後に「ミネルヴァのふくろうは黄昏がやってくると初めて飛び始める」という一節があります。ローマ神話における知恵を司る女神ミネルヴァ。その側にいる聖なる動物フクロウもまた知恵・哲学の象徴であり「森の哲学者」と呼ばれ多くの人に親しまれています。

 物事が活発に動いている間を昼間とすれば、その活動が一区切りついて終焉を迎えようとする段階を黄昏時といえるでしょう。物事が活動している最中には、その活動全体がどの方向へ進んでいるのか把握する間もなく、ひたすら突き進むものです。しかし、その活動がある程度進められ成熟することによって、その方向性や全体像がようやく見えてくるようになります。この段階を経て初めて、その活動の真の姿を知ることができるはずです。黄昏時にこれまでの活動を評価・検証することで、フクロウは次の新たな活動へ向かって羽ばたくことができるのです。

 今日まで、私は編集の仕事に携わって参りました。IT技術の発達により、私たちの暮らしの中で必要不可欠な情報は様々な形で得られるようになり、出版の世界においても出版形態はアナログからデジタル中心へと大きく変化しつつあります。ある時、ふと振り返ってみますと、編集の仕事をするようになった当初からは想像もつかない変化に驚くとともにその進化に感心することも多くあります。出版業界におきましては、アナログ、デジタルそれぞれの利点があるため、双方を有効に活用していくことがこれからの望ましいあり方ではないかと私は考えております。

 今後の活動内容につきましては、日本の食品業界としては非常に長い歴史をもつ学術誌「NEW FOOD INDUSTRY」の発行を中心に単行本や専門書など様々な形で幅広い食の情報を提供できるよう考えております。

エヌエフアイ合同会社 代表
今西 和政